えぽっく№85   2013年1月1日発行     <えぽっくリストへ戻る>   <スタッフからの情報>  

「2013年スタッフの漢字一字」渡辺明子・竹内良枝・高田敦子・猪爪奈美恵・小島奈菜子  「謹賀新年」花井敏夫



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ARGENTO VIVO アルジェントヴィーヴォ ピニンファリーナ社 本田技研工業 Pininfarina 関係者
限定配布 特製バインダー スライド4点付 オリジナルカラー写真貼付 2シーター(スパイダー)カ
ー 平7 1組 15,000円
寺澤昭イラスト 署名入 51×72糎  1枚 20,000円
COLOR ON COLOR -オペークインキのすすめ- 亀倉雄策 宇野亜喜良 横尾忠則 原弘 田中一光 大橋正
杉浦康平他 竹尾洋紙店 諸星インキ提供カラーガイド付 303×183ミリ リング装 刊行年不明 少
ヤケ 裏表紙少キズ 昭 1冊 33,000円
海音寺潮五郎歌まくり 日の本のやまとの玉ハ・・・ 毛筆落款入 シミ 34.5×46糎 昭 1枚 10,000

海音寺潮五郎歌まくり さつき風こがね含ミ・・・ 毛筆落款入 シミ 33×68糎 昭 1枚 12,000円
諸国風物絵葉書 諸国風物意匠絵葉書交換会仏閣篇 二葉会 帙 木版刷 龍泉寺・寒山寺2枚欠 昭9 1
帖 30,000円
PARIS-MODE パリモードプレート83枚合本 彩色刷解説付 シミ有 No.79-162の内No.145欠 No.126
迄は1883年No.127以降1884年刊 1冊 48,000円
中尾進さしゑ貼込帖 -天と地12点- 函 サイズ11×17糎~18×18糎程度 さしゑ2点シミ強 貼込帖少
シミ 昭 1帖 25,000円
特撮と怪獣 -わが造形美術- 成田亨 フィルムアート社 初 カバー帯 天少シミ 平8 1冊 8,000円
松鶴の栞 松屋呉服店 初 114頁 結婚儀礼の特集 服・支度品・道具など 売価入 伊東深水表紙絵 ヤ
ケ シミ 表紙裏表紙少汚れ 表紙少イタミ 裏表紙折れ跡 昭3 1冊 10,000円
世界文藝 1~8号 吉江喬松 木村毅 西脇順三郎 江戸川乱歩 日夏耿之介他 中央公論社 初 ヤケ
シミ 頁折れ跡 少イタミ 1号表紙に日付書込有 6号表紙に日付印有  昭10 8冊 4,500円
趣味ノ暗号 -海軍教普第三百一号- 西澤誠二編 海軍省教育局 ヤケ シミ 折れ跡 背少イタミ 印有
昭5 1冊 8,000円
拾遺集 -月刊同人詩誌- 1・5号 相原校三 黒岩隆 日原正彦他 池井昌樹 限100 ヤケ 少イタミ 1巻
水濡れシミ・汚れ強 昭47 2冊 5,000円
特撮美術 成田亨 フィルムアート社 初 カバー帯ビニールカバー  平8 1冊 13,000円
成田亨画集 -メカニック編-  成田亨 朝日ソノラマ 初 カバー カバー上部少イタミ 昭59 1冊
15,000円
マハフノツボ -セトモノノオハナシ- 北川民次 三協社 初 ヤケ 表紙上部少シミ 背少イタミ 昭
17 1冊 40,000円
花讃め -江森國友詩集- 江森國友詩篇 井上敏男版画 宇佐見英治跋文 沖積舎 限50 夫婦函 自書
タイトル毛筆署名入 版画10点サイン入 夫婦函ヤケ 昭52 1冊 13,000円
串田孫一草稿 ペン書200字詰原稿用紙 手塚富雄全訳詩集(昭和46)角川書店刊行に際して 昭 2枚
5,000円
深尾須磨子草稿 「花のリヅム」完 ペン書400字詰原稿用紙 6枚 18,000円
海音寺潮五郎書幅 「士有所不為」 函 36×32糎 シミ 1幅 28,000円
関野凖一郎絵入葉書 四万温泉にて 昭2 1枚 5,000円
武井武雄讃歌・ソノシート 安土文子原詩 西沢爽作詞 古関裕而作曲 刊本作品友の会  昭35 3点
6,000円
芹沢銈介絵入毛筆葉書 13×8糎 昭25 2枚 4,500円
ジューヌ JEUNE 創刊号 植草甚一 大島渚 関根弘 東野芳明他 寺山修司編集 実験室ジューヌ 山名
義三 金森馨 寺山修司代表 細江英公撮影 真鍋博 和田誠他イラスト 20×19糎 右下3×3糎程イ
タミ 昭35 1冊 15,000円
Toilette LA Feminine a travers les ages de1490a1645/de1645a1720 J.G.PRODHOMME NILSSON 彩色
図版各冊20葉入 少シミ 2冊 4,800円
JONR1010KC. JONRTV6CH. -朝日放送合併時会社案内- 長谷川如是閑 吉井勇 宇野重吉他 朝日放送 
北代省三写真 昭34 1冊 8,000円
そごう大運動会プログラム・マンガ号外 小川武他 そごう  昭12 6点 5,000円
CIVIC&BALLADE PRESS INFORMATION 本田技研工業株式会社 函 FF小型乗用車「シビック・バラード
シリーズ」プレス資料 函ヤケシミ 昭58 9点 8,000円
 


初心
 満開の紫陽花が夏到来を告げていますが、皆さま如何お過ごしでしょうか。夏の植物と言えば、子どもの頃世話した朝顔も思い出します。花を水につけて色水を造ったものです。
 入谷鬼子母神の朝顔まつりは夏の風物詩として話題となりますが、朝顔の種は中国名で牽牛子(ケンゴシ)と言うそうです。朝顔は牽牛子の花と言うことで、牽牛星たちが年に一度逢う七夕の日に朝顔まつりが開催されているとのことです。
 古書業界で七夕の頃に開催されているのが「明治古典会・七夕古書大入札会」です。手にする機会が少ない古書たちや新発見史料などが出品されて話題となることが多いイベントです。大学の先生が学生さんを引率してくるぐらい一見の価値ありです。入場無料、古書に興味ある方にはお薦めです。
 ひとことで古書と言っても扱い範囲は広く、本という形に限られていません。版木や機械で刷られたもの、手書きのもの、筆写したものなど。それらが一枚であったり、巻子本や和綴であったり、製本されていたり、保存形態もさまざまです。明治大正昭和時代のものもあれば、何百年も前のものもあります。
 そして、今日出版されている本たちも交えて、当店ではさまざまな古書を扱い、皆さまのお役に立つことを願い奮闘しておりますが、誠に残念なお知らせをすることとなりました。
 八重洲古書館は7月27日(金)をもって閉店し、東京駅八重洲エリアでの営業はR.S.Booksに統合することとなりました。R.S.Booksは小さな店舗ですが、古書の世界への入口・窓口としてのサービス強化とともに流通量の多い店舗となるように研鑽して参りますので旧に倍するご愛顧を賜りたく謹んでご案内申しあげます。
 活字離れよりも、住宅事情や大震災の影響から身近に本を置くことが敬遠されてきたと感じると同時に、電子書籍が急速に普及して行くであろう今日、伝えるべき書物たちの行く先を模索していくことが私たちの役目かと思います。
 「ひとりでも多くの方々に書物たちと触れていただきたい」その思いが、古書店街とは違う立地の八重洲を選んだ理由です。東京駅や八重洲エリアの再開発も進行し、ますます往来も激しくなることでしょう。毎日毎日、初めて出逢う方との会話も生まれることでしょう。出逢ったお一人お一人を大切にして、古書たちを掘り出す、集めることに力を注ぎたいと思います。
 街も人もライフスタイルも変わりました。“八重洲だからできること”初心に返り、金井書店は新たにスタートします。ご期待ください。
 スタッフ一同、皆さまのご利用をお待ち申しあげます。
           金井書店 花井敏夫


Wander The Wonderland

 7月。寒がりな私はようやく本格的な夏支度を始める。東京の梅雨寒が苦手で、毛布もホットカーペットもなかなか片付けられない。暦からひと月遅れぐらいがちょうどいい。
部屋の夏←→冬の入れ替えの時に本の整理も一緒にえいやっとやることにしている。が、はかどらない。「こんなの持ってたっけ?」「あ!この本こんなとこにあったんだ」ってディスカバリーの連続…ほんと困る。

 ディスカバリーといえば先日R.S.Books店頭に並んでいたある本を見て「あ!」となった。
「銀座界隈ドキドキの日々」(和田誠)イラストレーター、デザイナーである和田氏が大学卒業後の1959年から9年間勤めていた銀座のデザイン会社での仕事のこと、交友の思い出を街や時代のうつりかわりなども織り交ぜながらつづった自伝的エッセイ。昭和の時代の東京本を集めていた時に出会ったのだけれど、その穏やかな語り口と登場人物の豪華さにすっかり魅了されてくり返し読んだ本なのである。あの本どこに置いたっけ。

 私たちが和田誠の作品にもっとも気軽にふれられるのは本の装丁かもしれない。丸谷才一、谷川俊太郎、村上春樹、三谷幸喜など数多くの本の表紙を彩る人なつっこい描き文字、シンプルなのにユーモラスで洒落たイラストとデザイン。本屋で見かけるとうれしくてつい手にとりたくなる。「銀座界隈~」ももちろん本人の装丁。

 渋谷の「たばこと塩の博物館」に「わたしの句読点 2<食 いろいろ>」展を観に行った。和田氏も一員の東京イラストレーターズ・ソサエティのメンバー171人が博物館の柱である「塩」に着目して「食」をテーマにして描いた作品がずらり、見ごたえたっぷりだった。氏の作品は映画・チャップリンの「黄金狂時代」の有名な1シーンを題材にとったもので、煮た靴を食べる…というか、革靴から出てくるひとすじのパスタを食べようとするチャップリンが描かれていた。映画に造詣が深く著書も多数、映画監督もつとめたことのある氏ならではのユーモラスな絵にニヤニヤしながら、常設展示でデザインの仕事をしたたばこの「ハイライト」や当時のポスターもじっくり鑑賞。帰りにショップをのぞいたら復刊されたばかりの展覧会図録と目が合って…買うしかないよね。

 映画つながりで監督作品の「麻雀放浪記」を観る。阿佐田哲也原作の面白さもちろんあるけれど、モノクロの画面の中の人間模様にすっかり夢中になった。高品格、渋いわぁ!この映画で和田氏が受賞した新人賞のトロフィにはなんと映画を撮っていなかった頃に氏が陶器でつくったライオンがあしらわれているそう。なんて多才!

 このあたりまでくるとかなり勘が鋭くなって「銀座界隈~」はこの本棚のこの段にあるはずとピピっとくる。前後に二重に本棚を使っていようと本棚の前に積み上げた本の山があろうと大丈夫、すぐに見つかる。ほんとはどこかで見た和田氏の仕事場のようにすべてが美しく機能的に本棚におさまっていればそんなことにはならないんだけどなあと思う。思ってはいる。でもこんなふうに探す過程を楽しみたい自分もいる。

 ひさしぶりに読み返した「銀座界隈ドキドキの日々」はやはりおもしろく、ドキドキしながらページをめくった。先輩に田中一光・粟津潔・杉浦康平・伊坂芳太郎、後輩に篠山紀信・山下勇三、友人に寺山修司・横尾忠則・宇野亜喜良などその名前をみているだけでドキドキが増す。ジャズコンサートのポスターの仕事をするうちに立川談志や古今亭志ん朝といった落語家と知り合って仲よくなったり、遊びで流行歌のパロディをつくっているうちに歌づくりにはまりこんでピアノも一からはじめ、そうして作曲したものが高倉健主演の映画音楽として使われるようになったり、などと多方面にわたる活躍がごく自然にはじまる過程はほんとうに楽しそうでため息ものだ。50年前の作品が紹介されているのもうれしい。

 私にとって和田誠というひとは大好きなものばかりがそろった本棚のようだ。イラスト・デザイン・装丁・絵本・写真・ジャズ・映画・文筆・翻訳…どこから手にとっても楽しく奥深い。入り口が1つじゃないところも、ゆるやかにすべてがつながっているところも好み。そのドキドキな世界にずっとふれていたくなる。

 5月に発行された文庫版「新しい『マイケル・ジャクソン』の教科書」(西寺郷太)の装丁も和田氏の仕事。マイケルのイラストをモチーフにした手づくりの時計が表紙になっているのだが、この時計にはとっても素敵なエピソードがある。そのエピソードを手元に置いておきたいがためにすぐに本屋に買いに走った(ここでは紹介しないので気になる方はぜひ本屋へ!)。

 そうこうするうちに先日の「あ!」から本は2冊増えている。ほんとはもう少し増えている。やれやれ。でもページをめくらないとわからないことはたくさんある。神はやっぱり紙に、細部に宿っていると私は信じている。本というワンダーランドに迷いこむ日々はまだまだやめられそうにない。


「飲兵衛の東北」

 いよいよ夏本番間近です。今年も暑くなりそうですが、涼感グッズを利用するなどいろいろ工夫しながら上手に乗り切りたいものです。涼しさを感じるのもよいですが、暑いからこその楽しみもありますよね。私の場合はなんといってもキンキンに冷えたビール、キリっと冷やした日本酒、これに勝るものはありません。しかしよく言われることですが、休みの日に昼間から飲むお酒はなんであんなにおいしく感じるのでしょうか。
 夏といえば祭りの季節でもあります。八重洲地下街でも7月10日まで「東北夏祭り展」が開催され、写真パネルやイベントなど、パワフルな東北に魅了されました。残念ながら私はどの祭りも実際に見たことはないのですが、東北6県はすべて訪れているので、なんとなく身近に感じています。弘前城や角館の桜は息を呑むほどの美しさだったし、そこで生まれて初めてカウンターでお寿司を食べながら地酒を飲んだ時は、大人になった気がしたものです。また、玉こんにゃくをほおばりながら、あくせく登った先にあった山寺からの絶景や、世界遺産にも登録された中尊寺の金色堂を初めて見た時の感動は忘れられません。仙台の街を見守っているような伊達政宗の凛とした騎馬像は何度見てもため息が出るほど格好よく、昨年久々に訪れた鶴ヶ城は幕末時の赤瓦に生まれ変わり、威風堂々とした難攻不落の名城の姿に圧倒されました。そして会津で忘れられないのが、5~6年前に訪れた時にふらりと立ち寄った蕎麦屋で食べた「ニシンの山椒漬け」です。これがお酒にも合うしすごくおいしかったので、その後アンテナショップや物産展、居酒屋などで見かけるたびに食べてみるのですが、違う、味も食感も。もしやあの蕎麦屋のオリジナルだったのではと思っても後の祭り…お店の名前も場所すら覚えていない。かくして幻の逸品となってしまったのでした。
 そして東北は言わずと知れた酒処です。冒頭でも書きましたが、私はお酒、特に日本酒が大好きなので、旅先ではその土地の地酒を飲み、時間があれば蔵元を訪ねるのが楽しみのひとつになっています。「東京から来た」と言うと大体驚かれた後に「せっかく来てくれたのだから」と忙しくなければ仕込み水を飲ませてくれたり、少しだけですが蔵の中を見せてくれたりと貴重な体験をさせていただいたこともありました。忘れられないのが松島のこれは蔵元ではなくて酒屋さんだったのですが、そこで出会ったおばちゃんです。とにかく元気であたたかくて、なにより地元のお酒を愛してやまない、そんなおばちゃんが薦めてくれた「栗駒山」は今でも私のお気に入りの一本になっています。 それに限らず、酒屋や居酒屋で、訪れた蔵元のお酒が置いてあるのを見ると、その時の風景や出会った人たちを思い出して、いっそうおいしく飲めるのです。
 それにしても日本酒は奥が深い。【槽しぼり、袋搾り、しずく取り、あらばしり、中取り、責め、初しぼり、亀口取り、おりがらみ、笊取り、ひやおろし、瓶囲い、斗瓶取り】これみんな日本酒の呼び名なんです。搾る方法や時間、熟成によって呼び名が変わるのです。私もいろいろと勉強して知識を深めようと思ったこともありましたが、たどり着いた結論はやっぱりおいしく楽しく飲むのが一番ということ。とりあえずひやおろしが出始めたら秋だなぁと感じられれば、一飲兵衛としては満足なのです。