日本古書通信1998年10月号掲載

乞う!ご来店
                                       花井敏夫


 昭和四年、東京・目白に開業以来、幾多の変遷を経て現在の三店舗体制になりました。昭和五八年に目白の店舗を改築するまでは、狭いエリアのお客様を対象に、身近な書物を販売していましたが、改築とともに専門店化し、美術趣味郷土史歴史等を扱う店舗になり、カタログ販売、即売展販売中心の営業となりました。
 この変化に伴い、一般書中心の店売り主体店舗を東京駅八重洲地下街に構えました。この八重洲店も早一五年、約七坪から一五坪に拡張してから二年が経ちます。平成六年には、専門書も加えた四〇坪の八重洲古書館を開設し二店舗合計五五坪となりました。
 この八重洲エリアに店舗を構えた最大の理由は、古書店が専門店化し、カタログ中心の販売形態に重点が移る中、色々な書物が集まる店頭販売中心の店が有っても良いのではないか、しかも、古書マニアに限らない、一般の読者が立ち寄りやすい場所にこちらから出向くべきと考えたからです。
 東京駅前と言うことは確かに便利で、文庫、新書、小説、ビジネス書、マンガ等の一般書は、ビジネス街の皆様に重宝がられ、趣味の古書・専門書類も、全国各地のお客様がご利用になります。八重洲ブックセンター或いは神保町へ通われるお客様も多く見られます。
 二店の共通点は、理工書以外は何でも扱うこと。専門店や、通信販売の様な、奥行きの深い取り扱い方をしていないこと。色々な方がお見えになる場所なので、様々なジャンルを、しかもワンランク上の商品構成をする事です。店内は明るい照明で清潔感があり、暖かみのある木製棚が落ち着きを与えております。スタッフは全員が女性で、ソフトな接客をしており、オリジナルカバーと栞で本を送り出しいます。雨が降れば、傘袋もそっと配置されます。
 商品配列は、一般書を全面に配置し、一般文庫は翻訳・時代小説・推理純文学等に分け著者別に並べています。複数冊のセットものはパックされており、散らかるのを防止していますが、ご覧になる時はご遠慮なく開封して戴いています。岩波文庫、HPB、ハーレクインシリーズは番号順に並んでいます。番号順に並べているものは、マニアが多く、リストアップしている方が大半なので探し易いのです。整理する方も楽な方法です。
 新本特価書籍は、平台は勿論、平面棚も傾斜式にして平積みし、表紙が見えるように、新刊書店のベストセラー並みに陳列しています。
 『金井書店八重洲店』は一般書とともに、古書もおいてあり、特徴として、写真関係が纏めてあります。写真集はヘアーヌード・アイドルものから風景・社会派まで、小型版から大型豪華本まで有ります。雑誌はその時によりますが、戦前から最近まで各種有り、その他関連書があります。
 店頭の百円均一は目玉商品です。毎日百冊前後売れ、多い日には二百冊にも迫るぐらい売れますから、常に追加補充されて、時として山のようになります。内容は種々雑多で、貴方が何を見つけるかは運次第。実績からすると、お礼の言葉は聞いていませんが、好評なことは確かなようです。
 『八重洲古書館』こちらは、半分以上を古書の類が占めており、結構見応えがあると思います。趣味・美術・書道・歴史・郷土史・芸能音楽等があり、珍しい画集も何気なくおかれています。最近力を入れているのが、書道関係です。手本、理論、雑誌等の棚面積が増えてきて充実してきました。
 こちらも、三百円均一は目玉商品です。常設ではありませんが、サービス品がストックできると始めます。従来、五百円から千円千五百円で売られたものが、三百円になります。ジャンルも豊富で、掘り出し物が結構あるようで、日に五十から百冊も出ます。低価格で勝負できるものは、自店内で売り切るように努めています。
 昨今は雑誌形態のものが大変増えております。これに対応して、古書館には幾つもの引出が並んだ特製陳列棚があります。今では同人誌も取り扱いを中止しましたが、背中の無い薄い雑誌には威力を発揮しています。ファイリングケースのイメージで引出を手前に引き、表紙を見ながら選ぶようになっていて、面積当たりの収納力も大です。
 場所柄からか、社史・自伝・回顧伝等が入荷してきますので、棚の一角を飾っています。
 自分の心を捉える書物に出逢うには、仕入の多い売れる店をこまめに覗くことだと思います。回転の速い店には何か魅力ある本が隠されているのです。その魅力ある本を見つけたお客様は、嬉しさを押し殺し、サッと買って帰り、その喜びは殆ど他人に漏らすことがないようです。当店にも、毎日ご来店される方がいらっしゃいます。新入荷品を確認にくる方、何か一冊は必ずお買上げの方など、こちらも嬉しくなるお客様がいらっしゃいますが、一番喜んでいらっしゃるのはそのお客様自身でしょう。
 私たちは、折角交通便利な場所に店舗を構えたのですから、商品の充実を図り、より多くのご来店を願い、一人でも多くのお客様にご満足いただける様に努めています。正月と決算期の六月には、一割から五割引のバーゲンセールも行います。売っても買ってもポイントが貯まる『ポイントカード』、年会費千円で目録の送付と八重洲エリアでの現金お買上げ五%引き特典のある『蒐カード』も発行しています。普段から色々なイベントを行い、ご来店の方が得することを積極的に展開しています。
 古書館では限られたスペースで不足する部分を少しでも補充しようと、他店のカタログの閲覧コーナーを設け、インターネットの無料閲覧コーナーも設け、古書店の入り口的位置づけと情報収集機能を兼ね備えた複合的な店として運営しています。古書店も随分雰囲気が変わってきていることを金井書店の八重洲エリアでご体験ください。    (金井書店)

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